三国志の呂布の武器は、方天画戟ではなかった?

三国志は、魏、呉、蜀による戦争の話ですから、様々な武器や防具が登場します。
日本では、銃器が登場するまで、武器と言えば、日本刀、槍、弓あたりがメインで、それほど多くの武器はありませんでした。
しかし、中国は、様々な民族がいたことや、他の国との交流も多かったこともあり、武器の種類も豊富でした。
三国志演義でも、例えば、呂布は方天画戟、関羽は青龍偃月刀、張飛は蛇矛、曹操が董卓暗殺に使おうとした七星剣、曹操が所持していた名剣青釭の剣・倚天の剣……と、様々な武器が登場します。
日本の場合、例えば、宮本武蔵などの剣豪であっても、特別な武器を使っていたという記録はありません。
剣豪と言えども誰もが、同じ日本刀を使っていたわけで、銘はあるにしても、宮本武蔵と言えば、この武器というものはないわけです。
武器の種類が豊富であるというのも、三国志や水滸伝などの中国古典、あるいは中国武侠小説の面白い点です。

もっとも、三国志演義に登場する武器は、実際に三国志の時代に使われていたわけではありません。
例えば、呂布の方天画戟は、200年代の中国の製鉄技術では到底作れない代物ですし、青龍偃月刀、蛇矛と言ったものも、もちろん、ありませんでした。
正史三国志では、関羽、張飛共に、武器として手にしていたのは、普通の「矛」でしたし、呂布も「戟」という武器を使っていたと記されています。
剣にしても、一般的にイメージされる両刃の剣ではなく、後漢末の時代に、一般的に使われていたのは、直刀と呼ばれる片刃タイプのものでした。

三国志演義で描かれる武器と正史三国志の武器がどうして異なるのかと言うと、両者の物語の成立過程に違いがあることがあげられます。

正史三国志は、三国志の時代の後、司馬炎によって統一された晋の時代に陳寿が著した歴史書なので、その当時の事実がかなり正確に記録されているわけです。当然、武器も、実際に使われていた物だけが記録されています。

一方、三国志演義は、民衆の間で語り継がれてきた物語が、明の時代にまとめられたものです。
考古学者や歴史学者ではない一般民衆は、当然、呂布や関羽、張飛がどんな武器を使っていたかなど、検証するわけではありません。
明の時代にあった武器の中から、呂布や関羽、張飛のイメージにピタリ合うものを選び、それぞれの武器に名前を付けたというわけです。
そのため、三国志演義と正史三国志とでは、登場する武器が大きく異なるわけです。

とは言え、正史三国志に記録されている武器だけでも、日本ではなじみのない武器もあり、どのような武器だったのか、想像するだけでワクワクしてきますよね。

正史三國志案3

小説正史三国志 蜀書編

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 ご存じのとおり、三国志には、「三国志演義」と「正史三国志」の二種類があります。

 「三国志演義」は民間で語られてきた伝説を明の時代にまとめたもので、読み物として大変面白い活劇となっています。三國志のゲームや漫画や小説はこちらをベースとしています。

 一方、「正史三国志」は、歴史書で、実際に起きた事実を列記したものです。そのため、小説として読むのはきついものがあります。

 しかし、「三国志演義」と「正史三国志」とでは登場人物は同じでも、能力や性格が違っていたり、人間関係にも違いがあります。また、一方には登場しない人物もいたり、演義では敵役としてあっさり殺されているのに正史では長生きしている人もいます。

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